< 記事の信頼性について >
本記事は、静電気技術の専門メーカーである株式会社グリーンテクノの担当者が制作・監修しています。
株式会社グリーンテクノは、1969年創業。
静電気の「発生・帯電・放電」に関する装置の研究開発・製造・販売を一貫して行う専業メーカーとして、50年以上にわたり、製造業・研究機関・大学など多様な分野の課題解決に貢献してきました。
実際に現場での課題対応を行っている担当者が、導入経験や技術知見をもとに執筆しており、高い技術的信頼性と実用性を担保しています。
マスクや空調フィルターから産業用の集塵装置まで、私たちの生活や産業に欠かせないのが不織布フィルターです。
近年は「より高性能に、より省エネに」という要求が強まり、従来の繊維密度を上げるだけの設計では限界が見え始めています。
そこで注目されているのが 帯電処理(エレクトレット加工) です。
これは不織布に電荷を与え、繊維自体に「静電気的な吸着力」を持たせる方法です。
繊維の目を極端に細かくしなくても微粒子を捕集できるため、通気性や省エネ性を維持しながら性能を高めることができます。
本記事では、エレクトレット処理の原理や加工方式、その効果と導入のポイントを整理して解説します。
エレクトレットとは「電荷を長期間保持できる誘電体」を指します。
身近な例としては、マイク(マイクロフォン)や空気清浄機のフィルターがあります。
不織布にエレクトレット加工を施すと、繊維内部に電荷がトラップされ、静電気による二つの作用が働きます。
・クーロン力:荷電した粒子を直接引き寄せる力
・誘起力:中性の微粒子に一時的な極性を生じさせ、吸着する力
これにより、フィルターは単なる「物理的なふるい」ではなく、電気的な捕集性能を備えた高機能素材へと変わります。
従来は「厚みや繊維密度を増やす」ことで性能を確保していましたが、帯電処理を導入すれば「繊維の構造+静電気特性」で勝負できるため、省エネと高性能を両立できます。
エレクトレット加工にはいくつかの方式があり、対象や目的に応じて選定されます。
もっとも一般的な方式で、高電圧を電極に印加し、周囲の空気をコロナ放電させることでイオンを発生させます。そのイオンを不織布に付与し、繊維に電荷を蓄積させる仕組みです。大量生産に適し、空調フィルターやマスクなど幅広く採用されています。
気体や液体を利用して電荷を繊維内部まで均一に付与する方法です。コロナ帯電処理では表面中心の帯電に偏ることがありますが、この方式では厚みのある不織布や多層フィルターでも内部まで帯電できるのが特徴です。
加工時に熱や圧力を加え、繊維内の電荷トラップを安定化させる方法です。高温下でも電荷が逃げにくくなり、長期的な性能保持に優れます。医療用や産業用の高性能フィルターに適しています。
方式 | 特徴 | 向き・不向き |
コロナ帯電処理 | 汎用性が高い、広範囲加工に対応 | 一般的な不織布フィルター |
流動帯電法 | 内部まで均一に帯電可能 | 厚みのある不織布 |
熱・圧力併用 | 長期保持性に優れる | 高性能フィルター用途 |
帯電処理を施すと、不織布フィルターは大きく性能が変わります。
・捕集効率の向上
まず 捕集効率が向上 します。帯電していない不織布では物理的なふるい効果に頼るしかありませんが、帯電した不織布は静電気の力で微粒子を引き寄せ、より小さな粒子まで捕らえることができます。
・圧力損失の低減
次に 圧力損失の低減 が可能になります。従来は性能を高めるために繊維を細かく密にする必要があり、その分空気抵抗が増していました。帯電処理を施せば、目を詰めすぎなくても性能を確保できるため、通気性を保ったまま効率を高められます。
・長期安定性
また、長期安定性 も重要です。電荷は環境条件(湿度・温度)によって徐々に失われますが、適切な加工方式を選べば数か月〜数年単位で安定した性能を維持することが可能です。
応用範囲は広く、マスク、空調フィルター、産業用集塵フィルターなど、身近なものから高度な工業用途まで展開されています。
帯電加工を導入するメリットは単に性能向上にとどまりません。
・高性能化と差別化:市場が求める「高効率・低圧損」を両立でき、他社との差別化につながります。
・ランニングコスト低減:圧力損失を下げられるため、空調や集塵機の省エネ化に直結します。
・製品価値向上:単なる不織布が「高機能フィルター」という付加価値製品になります。
・環境対応:省エネルギー性は、脱炭素や持続可能性への貢献にもつながります。
つまり、エレクトレット加工は「性能+経済性+環境性」の三拍子をそろえた技術なのです。
メリットが大きい一方で、導入時には注意すべき点もあります。
・帯電持続性の課題 第一に、帯電持続性の課題です。 |
・加工条件の最適化 第二に、加工条件の最適化です。 |
・評価・測定 第三に、評価・測定です。 |
・設備安全性の確保 最後に、設備安全性の確保です。 |
装置選定では次の観点が重要になります。
・対象素材への適合性:不織布の厚み・樹脂特性に合った方式を選ぶこと
・ラインへの組込みやすさ:既存工程に追加できる設計であるか
・均一性:広幅の不織布でもムラなく帯電できるか
・安全性と操作性:高電圧部の安全対策や操作の簡便さが担保されているか
・導入前評価:テスト加工やデモ機で効果を確認できるか
これらを確認せず導入すると「思ったように性能が出ない」「ランニングで不安定」という問題につながるため、慎重な評価が欠かせません。
Q1. エレクトレット加工はどんな不織布にも適用できますか?
多くのポリプロピレン系不織布で効果が出ますが、素材や添加剤によって差があります。導入前に必ずサンプル評価を行いましょう。
Q2. 帯電処理後の性能はどのくらい持続しますか?
湿度や温度に影響されます。一般に高湿度では性能低下が早いため、安定化処理や保存条件の最適化が重要です。
Q3. 帯電処理の効果はどう確認しますか?
捕集効率試験、圧力損失試験に加え、静電電位測定器で帯電量を数値化して確認します。
Q4. エレクトレット加工装置は既存ラインに組み込めますか?
多くの場合可能です。幅やスペースに応じて装置を設計します。
Q5. 安全面に問題はありませんか?
高電圧を扱いますが、絶縁設計や安全カバーを備えており、適切な設置と点検で安全に運用できます。
Q6. コストはどのくらいですか?
装置仕様や処理幅によって変わります。省エネ性が高いため、ランニングコストは主に電力消費です。
Q7. 導入前にテストは可能ですか?
はい。サンプル加工や評価試験を行い、最適条件を確認してから導入するのが一般的です。
グリーンテクノは、静電気制御を専門とするメーカーとして、不織布に最適化した帯電装置を設計・製造しています。
・加工対象や条件に応じたカスタム対応・OEM供給
・導入後のアフターサポートと運用改善
私たちの強みは、装置を提供するだけでなく「現場の課題を一緒に考え、現象を再現し、最適解を導き出す」ことにあります。
静電気に関してお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
お問い合わせ
お問い合せ、資料請求などお気軽にご連絡ください