PAGE TOP
< 記事の信頼性について >...
INFORMATION

お知らせ

静電気の仕組みとは?発生原理から産業応用・対策までを実務視点で解説

2025/09/21

< 記事の信頼性について >

本記事は、静電気技術の専門メーカーである株式会社グリーンテクノの担当者が制作・監修しています。
株式会社グリーンテクノは、1969年創業。
静電気の「発生・帯電・放電」に関する装置の研究開発・製造・販売を一貫して行う専業メーカーとして、50年以上にわたり、製造業・研究機関・大学など多様な分野の課題解決に貢献してきました。
実際に現場での課題対応を行っている担当者が、導入経験や技術知見をもとに執筆しており、高い技術的信頼性と実用性を担保しています。

はじめに:静電気の仕組みを理解して“活かす”技術へ

静電気と聞くと、多くの人は「冬場にパチッと痛い」「ホコリを吸い寄せる厄介者」といったイメージを持つのではないでしょうか。

しかし産業の現場では、この静電気を制御して利用する技術が広がっています。

 

摩擦や乾燥などによって自然に発生する静電気は、製造工程では時に不良や事故の原因になります。一方で、意図的に静電気を発生させれば、粉体塗装やフィルター、材料の仮止めといった工程に役立つ強力なツールになります。

 

本記事では、静電気の基本原理から現場での発生条件、産業応用、さらに制御装置までを実務目線で解説します。

 

静電気とは?基本原理と現象の仕組み

静電気とは、物体の表面に電荷(プラスやマイナスの電気)が偏って蓄積する現象を指します。

電荷のバランスが崩れると、接触や放電によって電気が移動し、「火花」や「吸着」といった現象が現れます。

 

・正電荷・負電荷:電子の過不足で帯電の極性が決まる

・導体と絶縁体:金属はすぐ放電するが、樹脂やガラスは電荷をため込みやすい

・電界・静電誘導:帯電した物体が周囲に電界を作り、近くの物体にも影響を与える

 

つまり「電荷がたまる → 動き出す → 放電する」というシンプルな流れが、静電気現象の基本です。

 

静電気が現場で起こる仕組みを場合わけしてプロが解説

静電気が起きやすい基本条件と環境

静電気は環境条件に大きく左右されます。

 

特に湿度が低いと電荷が逃げにくく、帯電が顕著になります。

目安として湿度20〜30%以下では注意が必要です。

 

また、樹脂やフィルムなどの絶縁体は電荷を保持しやすいため、搬送ラインや高速剥離工程(スリッター、ラミネーターなど)では帯電が強く起こります。

摩擦や接触頻度が高い作業も静電気の発生源となります。

 

帯電列(トライボシリーズ)から見る素材ごとの静電気の起きやすさ

物質ごとに「電子を放出しやすい/受け取りやすい」性質の違いを並べたものを帯電列と呼びます。

たとえばガラスはプラスに帯電しやすく、フッ素樹脂はマイナスに帯電しやすいといった傾向があります。

帯電列の位置が離れている素材を組み合わせると摩擦帯電が強くなるため、材料選定時にはこの知識が役立ちます。

 

実際の現場で静電気が発生してしまうメカニズム

静電気が起きる仕組みを現場でよく見られるケースに分けると以下の通りです。

・摩擦帯電:異なる素材がこすれ合い、電子が移動して帯電

・接触・剥離帯電:物体同士が触れて離れるときに帯電(フィルムやシートで多発)

・誘導帯電:帯電体の近くに置かれた導体の電荷が偏る現象。誤動作や放電事故の原因になりやすい

・流動帯電:粉体や液体が流れる際に粒子同士の摩擦で発生

もし現場で、機械トラブルなどの対策がしたいと思った方は、こちらのページも参考にしてください。

 

【機械の静電気対策】設備で発生する帯電の原因と安全対策を静電気歴56年のプロが解説

 

静電気の仕組みを知り、“使う”技術へ:産業応用の広がり

「静電気は防ぐもの」から「静電気を活かすもの」へ――。

実際に現場では、静電気を利用した応用技術が数多く実用化されています。

・帯電固定:フィルムや成形品を一時的に吸着し、位置決めや搬送を容易にする

・静電塗装・フロック加工:塗料や繊維を均一に吸着させ、塗布効率や仕上がりを改善

・帯電フィルター(エレクトレット化):不織布に静電気を持たせて微粒子を効率的に除去

・静電選別:帯電特性の違いを利用して異素材の粉体や樹脂を分離

・静電仮止め:ポスターや掲示物をテープなしで貼り付け可能にする

このように、静電気は製造工程の効率化や品質向上に直結する「使える技術」として活用されています。

 

静電気を“使う”ための装置の仕組みと特徴

静電気を自在に使うには、コロナ放電という制御技術を用います。

関連記事:

静電気とコロナ放電の原理とは?仕組み・用途・対策までプロが徹底解説

 

高電圧を針状電極にかけると周囲の空気が電離し、プラスやマイナスのイオンが生成されます。

これを対象物に付与することで、狙った形で静電気を与えることができます。

 

摩擦帯電とは異なり、再現性が高く、安全に制御できるのが大きな特徴です。

現場では以下のような装置で活用されています。

・帯電バー:搬送ラインで広い範囲に帯電を与える

・帯電ガン:試作や局所処理に使えるハンドツール

弊社の具体的な製品も併せてご紹介します。

 

静電気のプロ「グリーンテクノ」の製品紹介

装置 主な用途 特徴 型番例
帯電バー 搬送ラインでの帯電固定、フィルム加工 ・広範囲に均一な帯電が可能・ライン生産に組み込みやすい B-500
帯電ガン 試作、局所的なスポット処理 ・ハンドツール型で持ち運び可・小ロットや研究用に最適 GC90

 

[お問い合わせはこちら]

 

https://www.greentechno.co.jp/products/

 

「静電気の仕組み」についてよくある質問・FAQ(Q&A)

Q1. 静電気はなぜ絶縁体にたまりやすいのですか?

背景:電気は“逃げ道”があると拡散して消えます。

仕組み:金属(導体)は内部に自由電子が多く、帯電してもすぐに面全体へ広がり、やがて大地へ抜けます。一方、樹脂やガラスなどの絶縁体は電子が動きにくく、表面や内部に入った電荷がその場に留まりやすいため、結果として「たまる」と感じます。

現場の見分け方:プラスチックフィルムや不織布の搬送で、貼り付き・反発・ほこり吸着が強い/金属治具に触れた瞬間に放電音がする。

 

対策のヒント:

イオナイザーで中和する(除電)。

接地で放電経路を作る(絶縁体は直接アースできないので、イオナイザー併用が基本)。

表面抵抗を少し下げる帯電防止剤や弱導電コーティングも有効。

 

Q2. 静電誘導による帯電と摩擦帯電は何が違いますか?

・摩擦帯電(接触・剥離帯電):異種材料が触れて離れるときに電子が移動して帯電します。フィルムの剥離、粉体のこすれ等で顕著。

・静電誘導:近くに強く帯電した物体があると、その電界の影響で金属体内部の電荷が偏る現象。触れていなくても起き、接地や接触のタイミングで一気に放電します。

現場の見分け方:

触れていないのに近づけただけで吸引・反発(→誘導の可能性)。

剥離直後に最大(→剥離帯電の可能性)。

 

対策のヒント:

誘導はシールド・接地が効く。

摩擦/剥離は工程条件(速度・テンション)最適化+イオナイザーが効く。

 

Q3. 帯電列(トライボシリーズ)はどう決まり、現場でどう活用しますか?

概要:物質ごとの「電子を手放しやすい/受け取りやすい」傾向を並べた表。帯電列が離れている組み合わせほど摩擦帯電が大きくなりがちです(例:ガラスは+寄り、フッ素樹脂は−寄り)。

注意:実際の帯電は配合(添加剤)・表面粗さ・湿度・汚れで変わります。理論値どおりにいかないことも多い。

 

活用:

材料選定で帯電列の近い組合せに寄せる。

どうしても離れる場合は剥離速度や圧、接触面積を抑える、イオナイザーを適所配置。

最終判断は実サンプルでの帯電測定が確実。

 

Q4. 湿度以外で“発生しやすさ”を左右する要因は?

・速度・テンション:速い/強いほど接触・剥離が激しく帯電増。

・表面状態:乾燥・汚れ・微粉付着は帯電ムラの原因。

・材質・厚み:高抵抗・厚いほど電荷が抜けにくい。

・粉体・液体の流動:配管材質や分岐部で流動帯電。

・接地品質:導体部の接地不良は誘導・放電事故を誘発。

対策のヒント:速度・テンションの見直し、ローラー材の変更、表面清浄化、接地点の抵抗値点検、粉体は導電性配管・イオナイズ含む。

 

Q5. コロナ放電による帯電の安定性は何で決まりますか?

主因パラメータ:

印加電圧・極性:必要帯電量に見合う電圧を。材料や目的で+/−を選択。

電極形状/ギャップ:針先・ワイヤ径・対象との距離で電界強度が決まる。

処理時間(ライン速度):滞留が短いと注入不足、長いと過帯電やムラ。

環境:湿度・温度・気流でイオン輸送が変化。

材料特性:表面/体積抵抗、厚み、含水率。

 

実務の勘所:

まず安全余裕のある低電圧→徐々に上げる。

ギャップは均一に、電極の汚れは定期清掃。

ライン速度を上げたら電圧/位置も再最適化する。

 

Q6. 帯電の“見える化”と測定はどうすればいい?

計測手段:

表面電位計/電界計:非接触で表面電位(V)を測る。

ファラデーカップ:部材全体の総電荷量(nC, µC)。粉体評価に有効。

チャージプレートモニタ(CPM):放電・中和の減衰時間を測る(イオナイザー評価)。

静電プローブ+ロガー:ライン上の帯電分布を把握。

ポイント:測定は基準化(距離・速度・環境)し、条件変更前後の差を比較するのがコツ。

 

Q7. 静電気はどれくらい危険?(人・装置・可燃環境)

人体放電:数kVでもエネルギーは小さいが、痛み・驚き・作業ミスの原因。

電子部品(ESD):半導体は数十〜数百Vでも故障し得る。ESD管理が必須。

可燃性雰囲気:溶剤蒸気や粉じんは微小エネルギーの火花で着火する可能性。工程設計・アース・等電位化・連結、イオナイズ、換気など防爆指針に準拠を。

※数値は目安。法規・規格(例:ESD規格、防爆関連)に従って安全設計してください。

 

Q8. 「除電」と「帯電」の使い分けは?

除電(中和):不具合を減らすために電荷を取り除く(粉塵吸着、貼り付き、ESD対策)。

帯電(付与):工程を良くするために意図的に電荷を与える(静電仮止め、静電塗装、エレクトレット化)。

実務ポイント:同じコロナ放電でも、バランスしたイオン供給=除電、偏った極性の供給=帯電。目的に合った極性・電圧・配置設計が鍵。

 

Q9. どの湿度が“安全域”ですか?加湿すれば解決しますか?

目安:40〜60%RHは静電トラブルが減りやすい帯。

限界:加湿は万能ではありません。材料特性や工程条件が支配的な場合、イオナイザー・工程条件の見直し・接地が不可欠。過加湿は品質(錆・吸湿)に悪影響も。

推奨:加湿はベースとして、要所に除電器/工程最適化を併用。

 

Q10. 帯電を“意図的に使う”場合、どれくらい保持できますか?

・短期帯電(静電固定・仮止め):環境次第で秒〜時間オーダー。湿度上昇や搬送で減衰。

・長期帯電(エレクトレット):材料・処理条件次第で週〜月オーダーの保持も可能。高温・高湿や洗浄で性能低下。

実務:必要保持時間から材料選定→処理法(コロナ/電界加熱)→評価試験(温湿度・経時)の順で設計。

 

まとめ:静電気の仕組みを知れば、「使える技術」に変わる

静電気は、発生の仕組みを理解することで「トラブルの元」から「制御可能な技術」へと変化します。

摩擦・接触・剥離・誘導といった静電気のメカニズムを正しく把握し、必要に応じて除電・帯電の両面からアプローチすることが、製造現場の安定と効率につながります。

 

グリーンテクノでは、コロナ放電を利用した静電気応用装置を自社開発・製造し、

お客様の工程や製品仕様に応じた最適な帯電ソリューションを提案しております。

 

静電気の活用や制御に課題を感じている技術者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

 

お問い合わせ

お問い合せ、資料請求などお気軽にご連絡ください