< 記事の信頼性について >

本記事は、静電気技術の専門メーカーである株式会社グリーンテクノの担当者が制作・監修しています。

株式会社グリーンテクノは、1969年創業。
静電気の「発生・帯電・放電」に関する装置の研究開発・製造・販売を一貫して行う専業メーカーとして、50年以上にわたり、製造業・研究機関・大学など多様な分野の課題解決に貢献してきました。

実際に現場での課題対応を行っている担当者が、導入経験や技術知見をもとに執筆しており、高い技術的信頼性と実用性を担保しています。

はじめに──なぜフィルム成形では静電気が問題になるのか

フィルム成形工程では、摩擦・剥離・高速搬送といった帯電しやすい動作が連続的に行われます。
そのため、静電気の発生は避けることができません。

静電気は、製品不良・異物付着・安全リスクを生む「トラブルの要因」である一方で、
適切に制御すれば、『工程を安定化させる“有用なエネルギー”』でもあります。

本記事では、グリーンテクノが長年携わってきたフィルム成形現場の実例をもとに、
「静電気を防ぐ」から一歩進んだ、“再現して制御する”静電気管理の考え方を紹介します。

 

フィルム成形工程で発生する静電気の実態

フィルムの製膜・巻取り・搬送などの工程では、帯電が至る所で発生します。

• インフレーション成形：ロールとの摩擦や剥離帯電
• 押出成形・キャスト成形：搬送中の摩擦・巻取りによる帯電
• 乾燥・低湿度環境：帯電が逃げにくく蓄積しやすい条件
• 樹脂素材特性：絶縁体であるポリプロピレン・PETは電子を保持しやすい

多くの現場では、「いつ」「どこで」「なぜ」帯電しているのかが正確に把握できていません。
この“見えない現象”が、再発を繰り返す最大の原因です。

 

静電気を「防ぐ」だけでは不十分 ─ 再現して“見える化”する

 

従来の静電気対策は、アースや除電装置など「発生後に除去する」手法が中心でした。
しかし、静電気の本質的な解決には、「どの条件で発生するのか」を再現・理解するプロセスが不可欠です。

グリーンテクノでは、帯電装置を使い、実際の製造条件を模擬した環境で静電気を安全に再現します。
これにより、

1. どの工程で帯電しているのか
2. どの電位で放電が起きるのか
3. 環境条件や素材の違いがどう影響しているか

を定量的に“見える化”できます。

静電気は「防ぐために、理解して再現する」。
この考え方が、再発を防ぐための第一歩です。

 

静電気を「活かす」 ─ 製品性能と工程効率を高める帯電技術

製造現場では、静電気というと「除電」「防止」といった“消す技術”が注目されがちです。

しかしグリーンテクノでは、静電気をあえて発生させ、制御して使うことで、
「工程の安定化」「製品性能の向上」「新しい加工プロセスの創出」を実現しています。

静電気を活かす考え方

静電気を活かすとは、単に帯電させることではありません。
どの素材に、どの程度の電荷を、どんな条件で与えるかを設計することです。
適切に帯電を制御すれば、接着剤を使わずに仮固定できたり、熱を使わずに粉体を密着させたりと、静電気は“非接触のエネルギー”として機能します。

グリーンテクノでは、帯電装置を用いた再現試験を通じて、「帯電量」「放電電位」「電界分布」などの最適条件を解析し、現場の目的に合わせた帯電設計を行っています。

 

1. フィルムの仮固定 ─ 静電吸着による搬送の安定化

薄膜やフィルムの搬送工程では、蛇行やズレ、しわといったトラブルが発生しやすい。
そこで静電気の吸着力を利用し、フィルムをローラーやテーブルに一時的に吸着させることで、
非接触・無振動で安定した搬送を実現できます。

この「静電仮固定」は、真空吸着のようにポンプを必要とせず、
装置構成をシンプルに保ちながら高い制御性を得られるのが特徴です。

特に、光学フィルムやリチウム電池セパレーターなど、
「傷つけずに保持したい」工程で有効です。

 

2. 帯電を利用した貼り合わせ・ラミネートの安定化

フィルム同士の貼り合わせやラミネートでは、わずかな位置ずれや空気混入が品質不良につながります。
帯電技術を応用することで、静電吸着により均一な密着状態を維持し、接着ムラを防止します。

また、帯電による吸着は粘着剤を使わずに行えるため、
一時的な固定が必要な工程や環境負荷を減らしたい工程にも適しています。

 

3. エレクトレット加工 ─ フィルター性能を飛躍的に高める帯電技術

エレクトレットとは、電荷を長期間保持できる誘電体です。
グリーンテクノでは、帯電装置を用いた不織布へのエレクトレット加工を行い、
空調・マスク・クリーンルームフィルターなどの捕集性能を高める支援を行っています。

電荷を与えた繊維は、微粒子を静電引力で捕捉するため、
目の細かさを変えずにフィルター効率を大幅に向上できます。
これは、フィルター産業における省エネルギー・長寿命化の鍵となる技術です。

グリーンテクノでは、
「帯電電圧」「極性」「印加時間」「環境湿度」など、
電荷保持に影響する条件を再現・評価し、
お客様の材料・装置仕様に合わせた最適な帯電プロセスを設計しています。

 

4. 静電植毛・粉体塗布など、帯電を応用した加工プロセス

帯電制御は、表面加工や装飾分野でも広く応用できます。

粉体塗布：粉体粒子を帯電させ、製品に均一に付着させる。塗装・トナー・コーティング工程に有効。

静電植毛：繊維を静電気で直立させ、均一な密度で表面に固定。自動車内装や家電製品などの高意匠加工に活用。

帯電改質：帯電状態を利用し、樹脂表面の濡れ性・接着性・光学特性を変化させる。

これらの応用には、電圧設定・電極形状・印加時間などの条件制御が不可欠です。
グリーンテクノでは、実験設備を用いて条件を再現し、
目的に応じた帯電制御技術を設計します。

 

グリーンテクノが提供する「静電気を活かす」支援

グリーンテクノでは、以下のような形で帯電技術の実用化支援を行っています。

1. 帯電装置を使った試験・評価サービス
   → 帯電条件（電圧・電極形状・距離・印加時間）を再現し、最適化
2. フィルム・不織布業界向けの帯電応用設計支援
   → 仮固定、エレクトレット、帯電塗布などの応用設計
3. 帯電現象の再現を通じた装置設計・量産立ち上げ支援

「帯電を制御する」という専門性を軸に、お客様の工程課題に合わせて“防ぐ”と“活かす”を両立する最適な技術を提供しています。

 

まとめ ─ フィルム成形の静電気は「防ぐ」から「使いこなす」へ

フィルム成形における静電気は、避けることができない現象です。
しかし、グリーンテクノが提案するように、静電気を再現・制御・活用すれば、品質安定・安全性・生産性のすべてを両立できます。

帯電（活かす）で工程を安定化し、製品性能を高める
再現・制御・応用の3ステップで、静電気を「管理できる力」に変える

静電気を“敵”ではなく“味方”に変える——

グリーンテクノは、フィルム成形分野におけるその実現を支えるパートナーです。

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